pleasure











〜13〜







車がキーっと音を立て枢木神社に到着する。

ルルーシュは先ほどの声を気に掛けながらも階段をとぼとぼと上がっていくと見慣れない少女の後姿が見えた。
その姿をスザクも見つけると不意に名を出す。

「神楽耶?」

スザクが声を発するとその少女はくるっと振り返りにっこりと笑うとスザク目掛けて駆け出してきた。
駆け出した少女はスザクへ飛びかかろうとしたその時にスザクはひらりと身をかわした。

「アラッ・・許嫁を避けるなんてひどいではありませんかスザクっ!」

少しわざとらしくプクッと頬を膨らましながら言う少女は幼いながらにどこか気品があるような雰囲気の持ち主だった。

「許嫁?!」

どう見ても兄と妹くらい年の離れた2人が許嫁・・ルルーシュがその言葉に反応をするとスザクがすぐに撤回するように声を張り上げる

「神楽耶!その話はもうなくなっただろう・・からかうなよ」

「ふふふ!久しぶりにここにきたらスザクがとても綺麗な方を連れていたので少しからかいたくなったのじゃ」

いたずらっぽく笑う神楽耶は少しスザクの表情と重なった。

「で、そちらの方は何方なのです??」

「あ・・えと、友達のルルーシュだよ。ルルーシュこの子は従姉妹の神楽耶。」

ルルーシュは従姉妹と聞き先ほど二人が重なった訳が少しわかった。
スザクが少し間をおきルルーシュの紹介をすると神楽耶はルルーシュに近づき顔を覗き込むように見てくる・・・。

「ん〜・・お友達ですか・・・私どこかでお会いした事ありませんでしたか?」

神楽耶が意味深な雰囲気でルルーシュに問いかけてくるとルルーシュの脳裏にセピア色のイメージが流れ込んでくる…。

それは今会ったばかりの神楽耶が泣いていて…自分はその泣きじゃくる神楽耶を慰めていて…そこに一緒にいるスザクはなんともいえない苦しい表情をしていた。

ぱっと見えたイメージはすぐに現実に戻されそしてまた頭の中に声が流れてくる

『もう・・もう思い出すな!!』

その声でルルーシュは意識を失う・・・。

スザクと神楽耶はいきなり倒れてしまったルルーシュに驚き駆け寄る。

「ルルーシュ?!」

スザクの声が消えていく意識の中でこだまする・・・あの時と同じように・・でも…――――あの時って…?――――


――――――――――――――――――――――――――――


倒れたルルーシュを部屋へ運び布団へ寝かせる・・。

「えと、ルルーシュさん・・?大丈夫でしょうか?」

神楽耶が心配げにスザクに問いかける。

「ん・・多分ね・・いきなりすぎたんだ・・」

スザクが表情を歪めながら答える

「いきなり・・・?」

そのあまりにも必死な表情に神楽耶は不安になり聞き返す

「いや・・なんでもない・・ところで神楽耶はなんであんな事ルルーシュに聞いたの?」

そう聞くスザクの表情は少し暗く神楽耶は悪い事でも聞いたのかと不安になる

「私はただお会いしたことがあるかもと思っただけで・・何かいけませんでしたか?」

「いや・・大丈夫だよ・・ごめんね」

スザクから優しさのある笑みが見え安心する神楽耶とは対象にスザクは焦っていた

「(神楽耶まで思い出すことはないはずだ・・この神楽耶はあの子じゃないから・・・)」


暗い・・暗い・・ここはどこだろう…と思っているとぼやっと光が見える。そこに立っていたのは…

「・・・俺?」

ルルーシュの前に立っていたのは自分と同じ顔・・同じ体系・・ただ違うのは瞳の色・・・。
その赤い色に目を奪われているとその口が開かれる。

「はじめまして・・ルルーシュ・・それとも・・・私。って言った方がいいのかな?」

にやりと微笑むその人物は自分だといった。
自分と瓜二つのそいつは続けざまに言葉をつむぐ。

「私はゼロ・・お前であって・・・お前じゃないものだ」

そんな唐突な事を言われてもすぐに理解なんて出来るわけがない・・・。

「な・・何を言っているんだ?」

困惑した表情を浮かべるルルーシュは足に力が入らずへたりとその場にしゃがみこんでしまった。

「そんなに驚く事じゃない・・さっきの声わかっていたんだろう?」

ゼロはルルーシュに近づき目線を合わせるようにしゃがみ込むと同じ顔で微笑まれる。

「わかっていた訳じゃ・・・」

ルルーシュが伏せ目がちに言うと思う・・本当にわかっていた訳ではない。なんとなく・・自分だけにしかあの声は聞こえてなくて・・声の主は自分にすごく近い人物・・・そんな感覚だけ・・。

「でも・・お前は身変わりだから・・・もうこれ以上思い出すことなんてない」

ゼロの表情がいきなり冷めた顔になる。その表情のまま少し冷たい手でルルーシュの頬に触れる

「身・・変わ、り・・・?」

その言葉に驚き目を見開く・・ゼロが何を言っているのかさっぱりわからない・・

「そう、身代わりだ・・朱雀が求めているのは私だ・・お前は中に私が居るから求められただけ・・簡単な事だろう?」

ゼロがそういうとルルーシュは手の振るえが止まらなくなる・・・

「朱雀・・・?な、何を言って・・・?」

ルルーシュの頭が何かを拒絶する、自己防衛をするように。

「まだわかっていないか・・いいだろう。すべて見せてやる・・だがその後は私に身体、返してくれよ」

にっこり笑いそういうゼロはルルーシュの頭に手を当てる。

触れた瞬間から場面が変わる・・300年前のあの時に・・・。




※ややこしく感じたのでゼロの一人称を「私」に変更しました。09.11.13加筆修正。



100216  修正。