pleasure 〜15〜 「朱雀・・」 ゼロは不安交じりの声で本堂に居る朱雀に話しかけた。剣<つるぎ>を持ちその動きを止める朱雀。 朱雀は剣舞が得意だった・・祭りのときは小さいときから舞っていたと・・母親がこの舞が好きだったと・・少し前にあまり笑わない朱雀から笑顔で話された。 「なぁ朱雀・・お前に力をやるよ・・・」 ゼロの言葉に朱雀は「え?」と丸くした。契約はしたがまだその時期には早い・・。 「お前の望みは・・なんだ?」 赤い瞳を輝かせ朱雀に質問する・・・ゼロはこのときに朱雀の本意が分っていたのだ。きっとあの少女を救いたいのだろう自分ではかなえられない願いを・・「人を助けたい」きっとこう思っているはずだ・・・。父や母を救えない朱雀に何が神力だと嘆いた朱雀に・・そんな朱雀にはこの力を使って欲しい・・自分が「消えても」・・。― 「治癒の力・・」 ルルーシュが小さくつぶやく・・悪魔にとっては人間の血や魂・・命が糧となるものだ。その糧をなくすような行為は禁忌・・。 悪魔がその力を人間のために使ったり、ましてやその治癒の力は自分のための物・・。誰かに譲る事をすれば体力・・いや、命を削る事にも成るかもしれない・・。 「私はこの後悪魔としての力は何もつかえなくなった・・」 ゼロが遠い昔を思い出しながら言うように話し出した。 「そして朱雀は本当に噂どおりの<神の力>・・いや、呪いを受けたんだ・・」 だんだんと沈んでいくゼロの声・・。 「”呪い”・・?」 「・・・あともう少しだ。ちゃんと見ていろ」 間を空けた言い方をするゼロに・・何も言えず・・頷くことしか出来なかった。 ―病や傷を治すことができる朱雀は長としてもだんだんと信頼と、反発していた物からはその反発がなくなり、<力>のおかげで村に活気と財が巡って来た。 少しすると神楽耶を連れてきた男は神楽耶をおいてどこかに消えてしまった・・。 その事を神楽耶は分っていたと表情を変えず話した。本当は助かるつもりは自分にはなかった。厄介払いされるためにここへ来たといった。 朱雀はそんな彼女の言葉を聞き神楽耶がここへ居たいならずっとここへ居ていいと話すと神楽耶はまるで花が咲くように笑ったのだ・・。 ゼロはそんな表情を見て<綺麗>だと思った。人間の感情を綺麗と思えたのは初めてのことだった・・自分に力がなくなったから人間に近づいたから・・そう思えるのか・・? あまりよくわからないがゼロはこの時「幸せ」だった。 朱雀には自分の状態を話していない・・いつか消えてなくなるかもしれないといえなかった・・でも分っていた・・朱雀に<力>を渡してから自分は「消えている」少しずつ・・少しずつ・・消失していく感覚に恐れはないけど・・少し、寂しい・・。 そんな思いをしている事を・・神楽耶に気付かれて・・そして朱雀にも知られてしまった・・。 「どうして言ってくれなかったんだ・・・!」 「そうです!!ゼロ様・・ゼロ様が消えてしまう・・なんて・・」 朱雀は怒り・・神楽耶は泣いていた・・ 「私は助かってはいけなかったのに・・助かっても何も無かったのに・・どうしてゼロ様が・・・」 泣きじゃくる神楽耶の頭を優しく撫で…その様子を朱雀は黙ってみている。 「私は神楽耶を生かしたかっただけ・・それに居なくなって良い人間なんてここには居ない・・」 ゼロはそう落ち着かせるようにいうと朱雀が静かに口を開く・・。 「そうだ・・いなくなっていい人なんて居ない・・。君もいなくなってはいけない・・。」 そういうと本堂に向かって走り出す朱雀・・それをゼロと神楽耶は追いかける 朱雀は飾られている剣<つるぎ>を持ち神楽耶の前に渡す・・。 「君には力がある・・・俺とは違う力だ・・この剣に”願い”を・・・」 ゼロには朱雀が何を考えているのか分らなかった・・・でも神楽耶は朱雀の心を読んだのだろう・・。小さく・・少し躊躇いがちにだが頷いき剣を手にする。 そして剣に手をかざしていた神楽耶は慣れない力を使いすぎたのかそのまま寝てしまった。 「ゼロ・・君はこのままだと消えて・・なくなってしまう・・そんな事は絶対に嫌なんだ・・」 朱雀の真剣な表情にゼロは頷いた。朱雀になら何でも任せよう・・。 朱雀がゼロにいったのは少し・・信じられない事実・・神楽耶の力をこめた神剣でゼロのその魂を封印するそして体はなるべく早く転生されるように“願う”。神の力は願いから・・願いが根本により奇跡が起きる。 その奇跡の確立が朱雀と神楽耶は高いだけ・・。 他は人間そのものだ・・何も違わない人間に神なんかいるわけない・・ただ・・ただ・・強く願うだけ・・。 「ふっ・・朱雀は私をそこに閉じ込めて他にいかせなくするというのだな・・まったく・・この3ヵ月でお前という人間を見てきたが・・ここまでの奴だったとは・・驚いた・・」 言葉は皮肉だがその声が震えている・・もし・・もしもう朱雀に会えなかったら・・もうこの顔に・・この魂に会えなかったら… そんな事考えたくもない…でも、消滅すよりは確率的に高い行為。 また朱雀に会えるならここで消えたい・・。この幸せな思いのまま・・。 「まぁ・・いいだろう・・朱雀、その“願い”確かに受け取った」 でも・・このまま消えてしまっていいのだろうか・・自分の力を手に入れた朱雀は・・?悪魔の力が朱雀を幸せにしてくれる事などないだろう・・きっと“呪い”が朱雀を蝕んでいくのだろう・・。 あまりにも軽率すぎた行いを今になって悔やんでも・・もう遅い・・。 それを朱雀に伝えると・・ 「この力はゼロがくれた物・・君からの力を俺が疎ましく思う事なんてこれから一生ない・・この力はゼロそのものだから・・」 そんな愛しそうに言う朱雀・・少し・・罪の意識を軽くしてくれる・・。 もう思い残す事は・・ない・・神楽耶が起きるとまた大変だ・・・早くしてもらおう・・。 それにもう「始まった」らしい・・・。 「朱雀・・頼む・・」 短く伝えると朱雀の顔が悲しげに歪む…ゼロはその身体が消えかかっているのに微笑んでいるから…。 消えかかるゼロの体に神剣をあてがう・・・すぅっと光が集まりその剣に光を宿す・・・。 「またな・・朱雀・・」 手を伸ばしても触れる事ができなかった朱雀の手・・そしてその涙も自分にはふき取る事が出来なかった・・・また・・また会いたい・・・そんな思いもまた体と共に透明に成る・・。― 「これが私の全てだ・・」 短い言葉で言い終えるとまた真っ白な空間に帰ってくる 「・・どうして泣いている??」 ゼロにそういわれ自分が泣いている事に気がつく 「わ・・分らない・・」 何故と聞かれてもわからない物は分らない・・きっと無意識に泣いているから。泣いているというよりも何か色々な感情があふれ出しているのだ・・。 「私の全て・・いやお前の全てを教えてやった・・私に体を返してくれ・・また朱雀と会えたのに・・こんな所で閉じ込められるのは嫌だ・・!」 だんだんと少しヒステリックになっていくゼロにびくっと身体が構える・・。 「そんな事言われても・・どうやって・・・」 ルルーシュが困惑していると」ゼロがそのそっくりな顔をくっつくほど寄せてルルーシュに言う。 「お前が消えればいい」 言葉の残酷さが嘘のような綺麗な笑みを浮かべているゼロの顔に・・ルルーシュは言葉を失う・・・ 「(俺が・・・消える・・?)」 100216 修正。 長々と過去変&こじつけ← 朱雀とゼロの最後の場面はギアス本編を少し思わせるように…としていたのですが^^;;;ただ「願い」はゼロのほうが受け取りました。 このまま「呪い」を受けてスザクはどうなってしまうのか・・・と言う所もこの後明らかになります! |