pleasure









〜19〜









 
 
 
穏やかな日常がこれからずっと続いていくんだと思ってたんだ…だって、これからずっと一緒にいられると思ってたから…。
 
 
 
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「スザク、準備できたぞ…」
ルルーシュが部屋の扉をあけ制服のボタンを閉めながらスザクへ伝える。
 
俺がゼロと同化してから数週間…特に変わったことはないんだが…
 
「・・・」
 
スザクからの返事はない・・・
 
「スザクっ・・?」
 
スザクは2日前くらいからどこか一点を見つめて考え事でもしてる事が多くて…一度話かけても返事が返って来ない事も珍しくない。
 
「あ・・ごめんルルーシュ…呼んだかな?」
 
優しそうに笑うスザク…でもどこか思いつめているような表情をしている。
 
「…支度、できた」
 
何があったと聞きたい気持ちは多いのだがスザクから「聞くな」と無意識に出てるオーラで言われてる気がして何も聞けない…
 
「じゃあ行こうか、今日は学園祭だから忙しいよ」
 
無邪気に微笑むスザク…先ほどの悩んだ様な顔がちらつく…どうして…
 
「あぁ・・覚悟しておく」
 
ほんの少し不安を押し殺してスザクに笑顔で返す…だって今は少しでもスザクと一緒にいたいから…有限な時間を精一杯…。
 
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学園祭ではスザクは実行委員側なのでルルーシュもそれに付き添い行動をしていた。
 
「このあと僕出番だから少し離れるけどちゃんと見えるところにいてね」
 
にっこりと笑い手を振りスザクは舞台裏へかけていった
生徒会の出し物でスザクは剣舞を舞う…昔・・・「朱雀」がしていたものと同じ剣舞…。
胸が締め付けられる…懐かしさや愛おしさで…
でも。今見たスザクの笑顔に違和感…ではないがなにかスザクらしくない…。
 
「(一番後ろでみてる…)」
 
体育館に出来た観客席の一番後ろの非常ライトの下を指差しスザクに伝える。
スザクは舞台裏に入る直前にそれをみて微笑みながら頷いた。
ルルーシュは客席の一番後ろから舞台を眺める
人で埋め尽くされた客席を見渡しながら思う…数ヶ月前スザクと出会わなければこんな所にいることはなかった…人間なんて短い一生で得られるものなんて少ないと思い続けていただろう…でも今、ここから見るとそれは間違いだったと気付く。
限られている時間だからこそこんなにも必死に…「今」を輝かせて生きているのだと…。
 
ビーーーーーー!
 
と大きく鳴る開園のベルがルルーシュの思考を遮った。
 
(俺は・・・)
自分の考えていた事を思い出し少しフっと笑いをこぼす。
余程こっちの世界に感化されているらしい…楽しい気持ちや幸せを感じるのは妹と弟といる時だけだったというのに…自分は今こんなにも「幸せ」だ・・・。
 
「今」の幸せを感じながらルルーシュは舞台へとその視線を移す
 
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舞台で行われている演目は良くある悲恋な物語…その話をアレンジして中国風な衣装や背景でオリジナルな演出…。
生徒会主催の劇は会長であるミレイアッシュフォードの息がかかりとても凝ったいた。
ルルーシュ自信もその会長の行事への熱の入れ方をこの数週間で身をもって体験した・・・。
 
(ただの作り話…だが今は何故か少し苦しい・・・)
 
はじめてみる劇を食い入る様に見つめてしまうルルーシュ…キラキラとスポットライトの当たる舞台を眺めながら切ない気持ちを押さえ込む。
一国の姫と敵国の王子…結ばれない二人…そんなドコにでもあるような話に心が動かされる日がくるなんて…そう思っていると…
 
シャリン・・シャリン・・
 
聞き覚えのある鈴の音・・・
劇中の一場面…姫の国と王子の国の戦争が起こった…姫の騎士は姫を守る為にその身一つで敵国一軍を相手にする・・・幼馴染の騎士の思いはこの戦争を終わらせること・・・
思い続けた姫のために・・・。
その騎士の役がスザクが舞う剣舞・・・舞台上では一人だが舞の早い動きに戦闘シーンを重ねるというものだった。
シャリンシャリンと心地いい鈴の音とスザクの軽い足音…時々どんッと足を踏み込む音・・
今この会場の全ての視線がスザクに向かっている・・・
白を貴重にした着物に金の刺繍・・・中華風の正装をイメージして作られたそれと剣舞が見る目にとても美しかった…。
 
舞台に目を奪われていると遅れてやってきた女子生徒2人が声を抑えながらだが話しながら体育館へ入ってきた
 
「あ、やだ・・ほらっもう始まっちゃてるー」
「私のせいじゃないよぉ…あ、でも枢木君見れたよ」
 
別に聞きたい訳じゃなかったが聞こえてきた会話…
「やっぱり枢木君かっこいいよね〜ぇあの枢木カンパニーの御曹司だしなんでも出来るし…理想だよねぇ」
「うんうん…あ、でも確かもうすぐ留学しちゃうんだよね…」
「あー…残念だよねぇ〜」
 
(・・・・え??)
 
その女子生徒の話を聞き自分の耳を疑った…だってそんな話し…自分は一回も聞いてない…どこかへ行ってしまうから最近様子がおかしかったのか?…それを自分に知られたくないから・・・?でもどうして・・・。
 
自分の頭のナカでぐるぐるといやな考えだけが回る・・・不安な気持ちはもうしたくない・・・!
瞳をキツク閉じて耳をふさぐ…現実だと受け入れないように…
耳を塞いでも聞こえてくる鈴の音は最後にガシャンと大きな音を立てて止まる…劇中で騎士がそこで息絶えた様に・・・。
 
 
 
 
 
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