一頻り泣いた俺はスザクにもたれ掛かって立っていた。 「…っ。すまない」 拳で顔を隠しながらスザクから距離をとる。 「…いいんだよ」 俺の肩を抱いていたスザクの右手が悲しく空気を掴んだ。 「君を不安にさせたのは僕だ…それに気付かなくてごめん」 別に謝ってほしいわけじゃない、「どうして」とその理由が聞きたい。 その抱きとめる手が少し震えてる気がした。 「今日はもう帰ろうか…」 頬を寄せ、スザクが聞いてくる。 「お前はまだ役員の仕事があるだろう…帰るわけにはいかない」 スザクの白い着物の襟をそっと握り、スザクの目を見ながら言った。 今、この時代ならスザクはそれが出来るはずだ。 「ルルーシュ…そんな事、別にいいんだよ」 俺の髪を一束掴み、指で撫でながら微笑むスザク。 「今日はもう帰ろう」 優しいけれど言い返す事の出来ない言い方をされ、それ以上何も言えず頷いた。 ************** 「汗臭いまま話し合いなんてあんまり良くないからね」 と笑顔で言っていたが少し寂しそうだったスザク。 ふと、目に入ったのは鏡に映る自分の顔。 ルルーシュは大きくため息を吐くと、両手で自分のその顔を覆いしゃがみ込む。 ちゃんと話そう…思っていることを。 ルルーシュの想いが決まった所で遠くから人が近づく気配を感じると覆っていた手を頬に移し、出来るだけしゃんとした顔を作る為に二、三度ぱちぱちと叩く。 「お待たせ」 スザクはタオルを首にかけ、まだ水分を多く含んでいるその髪をわしわしと乱暴に拭きながら部屋に入ってきた。 「お、お前…!風邪でも引いたらどうするんだっ」 ルルーシュはスザクのタオルをもぎ取ると手荒しく、でもどこか優しくスザクの髪を拭き始めた。 「ははっ、自分で出来るからいいよ?」 「では初めからやって来い!子供みたいだ」 スザクは言葉ではしなくていいとい言っているが、ルルーシュの手を止めようとはせず、ルルーシュも言葉強く言っているがその拭く手を止める事はなかった。 癖の強い髪から水分がなくなってくるとふわふわとよく知った感触がルルーシュの手に触れる。 「…なぁ、スザク」 大分乾いた髪からタオルを離し、自分の手を軽く乗せるルルーシュ。 「なぁに?」 スザクは髪の感触を確かめる様に触っていたルルーシュの手首を握り、自分の唇に近づけ、そのまま指に口付ける。 「っ…お前、俺に話す事あるんじゃないのか…」 唇が寄せられた指がもどかしく、少しその手を引いた。 「あるよ…大切な事が」 「……っ」 いざ、スザクの口から聞くと思うと全身に緊張が走る。 「遠くに行かないといけないんだ…凄く、遠くに」 悲しげに眉を寄せるスザク…。 『スザクは俺を必要としてない…』 ここで泣いては駄目だ。 「そう、か…。わかった」 「…え?わかったって…」 ルルーシュはスザクの言葉をそれ以上聞かない様に自分の口でその口を封じた。 |