秒読み 〜秒読み 10 〜 あれから一週間が経とうとしていた・・・。 あの日から俺の中で時が止まっているような感覚がしている。 前にも踏み出せない・・・後ろにも引き返せない・・・・。 スザクは知らない、俺がこんなにも汚い人間だと。 知られるのが恐い。それを今までは願っていたのに今はそれが一番恐い・・・。 身勝手にも程があるな・・・でもそんな事思っていてももうどうしようもない・・・。 俺のやってきたことは消えないし、スザクもユフィの騎士である事には変わりない・・・・。 あいつが俺を好きでも・・・俺があいつをどう思おうと・・もう何も変えられないじゃないか・・・・明日はスザクの騎士着任を祝うパーティー・・・ 「(もう俺には進む事しかできないんだ・・・お前から・・・離れさせてくれ・・・)」 自分を拒絶してもらいたくない相手から拒絶される事を望むルルーシュ。 携帯を手に持ち少しの微笑を浮かべて電話を掛ける・・・・。その瞳に少し涙を浮かべて。 ――――――――――――――――――――――― 次の日の放課後クラブハウスの広間にはたくさんの生徒で溢れかえっていた。皆スザクを祝う為の人達。 イレブンと虐げられていたスザクは今ではブリタニア第三皇女の筆頭騎士の枢木スザク・・・その名誉を与えているのは他でもないその皇女のユーフェミア・・・俺が助けてやれなかった事・・・。 それを簡単に出来てしまう事を羨んではいけない・・・。元から違うのだから。 俺は 捨てられた 。 僕は キタナイ 。 頭の中で響くような声に少しふらつくような目眩を感じ意識を戻す。 そしてホストとして給仕の仕事をしていると不意にスザクと目が合う。 「(・・・・・サイン。)」 首もとの制服をくいっと指で持ち上げるサインをするスザク・・・『屋根裏部屋で話そう』幼い頃に決めたサインだ。 そのサインを見てさりげなくその場を抜けて屋上に向かう。足取りは重たい・・・。予想はしていた事だがその予想通りにならないで欲しい・・・でもなって貰わないといけない・・・。 スザクの為に・・・・俺自身の為に・・・。 「主役がこんな所にいていいのか?」 ルルーシュの明るい声がする。 その声で振り向き抑えられない笑顔が出てしまう。 一週間前のルルーシュの様子が頭から離れなかったが目の前で見るルルーシュは変わらず綺麗で・・・輝いて見える。だけど・・・少し痩せたかな・・・。 「少しくらいなら平気だろ?・・・それよりも身体の具合は大丈夫?」 「ああ、平気だよ・・・・。」 言葉の最後の方で目を逸らされたのは気のせいじゃないんだろうな・・・・とスザクは思いながら話を続ける。 「この前はごめんね・・・なんか困らせる事言って・・・でも本当のことだから・・・」 「・・・スザク。」 困ったような顔で見てくるルルーシュにかぶせて言葉を発した 「でも・・・!どうしたいとかじゃないんだ・・・唯、知っていてくれるだけでいい・・・」 そういい終わるとルルーシュは俯いて何も話してくれなくなってしまった。 「・・・・ごめん。こんな話君を困らせるだけだったね・・・本当は違う話をする為に呼んだんだ」 眉を下げて笑うようにスザクが言う そのスザクの言葉に顔を上げてルルーシュが答える 「違う話・・・?」 「そう・・・テレビとかでももう少しづつ話題に成ってるけど『特区日本』の設立の話・・・是非君とナナリーにも参加して欲しい・・・あとユーフェミア様がもう一度ルルーシュに会いたいって」 そう優しく笑い話すスザク。 その話は大体予想はついていた・・・でもこの言葉を聞いたからにはもう・・・ 「・・・・・それは・・・・。」 また俯いてしまったルルーシュから表情が伺えなくなってしまった。 「俺には無理だよ・・・スザク。」 次に口を開いたルルーシュは冷たい表情をしていた。 その表情に背筋がぞくっと冷えた気がした・・・。 「ど、どうしてっ・・・!」 やっとの思いで出せた言葉は疑問だった。何故反対するのか・・・何故受け入れてくれないのか・・・そんな事だけが自分の中にあった。 君を守る為の場所が出来たのにそれを拒絶される・・・ルルーシュの気持ちを汲み取る余裕がなかった自分にはこの言葉しか出せなかった。 「・・・俺は・・俺達は存在していない事に成っている・・・ブリタニアの名を捨て今も隠れ暮らしている・・・特区といってもブリタニアの中の制度・・・そのうち身分がばれれば国へ強制連行・・・その後のことは考えたくも無い・・・」 ルルーシュは可能性の話をしている。スザクもそれをわかってはいる。 でもそれは最悪の事態。予想はしているがスザクはそれを守れる自身があったからこの『特区」に賛同したのに・・・ 「そんな事には絶対させない・・・!君達は・・・君は僕が守る!!」 「ちがうっ!間違っている・・・!お前はユフィの騎士だ・・・・そんな事は頼んでもいないし、望んでもいない・・・・。」 冷たい表情のままルルーシュが言い放つのを見て何もいえなくなってしまう。 「それに・・・守ってもらえる資格なんて俺にはないんだ・・・でも、ナナリーの為にもう少しちゃんと考えておくよ・・・制度次第でナナリーだけでもそこに・・・・じゃぁな、スザク・・・。」 スザクは屋上の扉から去っていくルルーシュをしばらく見つめる事しかできなかった・・・。 100216 修正。 |